龍達の朝

IVY, Feel So Free

In the Clear

In the Clear

朝、歩いて出勤していたら
いきなり後ろから背中を思いっ切り叩かれる


驚いたの何のって、時間は早朝の5時台である
こんな時間に人に接触されるなんて
通り魔か痴漢以外にありえない


呆然としながら眺める、走り去っていくスーツの背中
振り向いてニヤリとしたそいつは・・・同じアパートの幼馴染だった



よくわからん職に就いてはバックレを繰り返し
アルバイトに着地しては再び蒸発を繰り返し
2ちゃんねるの歴史スレッドを荒らしまわり
(自分の周りでおれより確実に歴史知識があるのは彼だけ)
下手な夢や希望よりもずっと貪欲に
自由だけに執着し
自由だけを渇望し続ける人生を送る男


あらゆるものを与えられる恵まれた環境、あるいはその逆で
周りから全く影響されない場所でそれをやってるなら
ただの残念過ぎるだけの人間だが
彼は家庭の身の上が不幸すぎて、選択とか決定とか以前の
スタート地点から既に逆境だった


そこでこの生き方を選ぼうって思える強さと
逆風に特別にされてしまった狂気には
正直、頭すら下がる


あいつは平成の呂布
ずっと、独りの呂布だった



そんな彼がこんな時間にスーツを着て通勤しているのだ
彼なりにまともな道を、強い気持ちで選べたのかもしれないと
ホッとしつつなぜか寂しい気持ちにもなった


「なんて時間に出勤してんだお前(笑)無理せずにな」


とメールを送り、おれもおれの一日と選択に立ち向かう
腐れ縁はまだ続くなあくそったれ!と思いつつ



・・・おっと、返信メールが



「やっぱりおれ正社員とか向いてないでバイトに戻るわ!」