夏の光や風の匂いや蝉の声 君と飲むビール

村上春樹, 羊をめぐる冒険

羊をめぐる冒険 (上) (講談社文庫)

羊をめぐる冒険 (上) (講談社文庫)

羊をめぐる冒険 (下) (講談社文庫)

羊をめぐる冒険 (下) (講談社文庫)

人と違った、逸れた生き方をしていると
同窓会なんかに顔を出し辛くなる


いろいろ話を聞かれたくない
誇っているはずの今という選択も
多数の社会という概念の共有の前では
意味もなく力を失ってしまう


元々、無意味であったことに気付いてしまう


それでも、同じようにアウトローだったあいつは
今どうしてるかなって気になってしまう
いや・・・むしろあいつにこそ会いたくない気もしてしまう
アウトローであるということ自体に意味を見出す人間は
アウトローを上手く活かしてる人間にこそ
一番の劣等感を感じてしまうもの


全ては一般論の中にある
一般論の中で、生き方や感じ方を着こなせるかどうか
それだけの話なのだ


・・・本当にそうなのか?




学生時代の呑みで語られるような戯言を
そのまま口ずさみながら生きていってしまったような
2人の異なる物語


個人的でアウトローな感じ方を
社会の中で器用に取捨選択することで過ごしていく僕


感じることの美しさや、苦しみさえも愛し
全てを与えてくれる羊さえも拒絶して
社会でもシャーマニズムでもなく
ただ、自分という迷いに全てを完結させた鼠



多分、この小説・・・風の〜から続く羊シリーズを読み返すのは
6回目くらいだと思うんだけど


ずっと「僕」に憧れて生きてきた自分が
初めて「鼠」だったんだと気付いた瞬間だった



どんな形にせよ最期は死ぬと思う
そして、それは自分という全てと心中するという状態以外にあり得ない