一作 

伊藤たかみ, 八月の路上に捨てる

八月の路上に捨てる

八月の路上に捨てる

フリーターをしながら脚本家への夢を持つ敦は
三十歳になる明日、離婚届を提出する


自動販売機への補充をする仕事のトラックの中
明日、配送の仕事から総務へ異動する水城へ
敦は結婚生活の日々を振り返り語り始める



盟友おくこ嬢から借りた一作


この手の作品は好きとか感動とかって定義では語りづらいけど
個人的にここ数年で一番心にズッときた作品だった
これも微妙な言い方になってしまうけど
春樹先生を初めて読んだとき以来くらいの何かがあった




夢を抱えて生きているという敦のプライドが
解りすぎるくらいに痛々しかった


それ故に、一番の理解者であったはずの知恵子を追い詰め
夫婦生活が破錠してしまっていく様
貫きたいけど諦める理由が欲しい矛盾・・・


その癖、裏では不倫関係に心を乱され翻弄されてしまう
心の素な愚かさ




それも「イマドキ」な人生観と苦悩の寄せ集めなのかもしれない


最後の方で
「おい、こらバイト、そんなとこで遊んでるんじゃねえ」と言われても
おれは何もかも本気だったのだと
街路樹の根っこを掘り続けるシーンは
世の中のマトモな価値観と
無意味に思われるような自分の中の熱のズレのようなものを
正に象徴してるのかと思った



おれもまた「イマドキ」な感じにズレただけの一人なんだろう