今、やり直せよ。未来を。

夢がどうこうとか言ってる時は
命に変えてもそれを欲しいとか曰わるくせに
いざ、そのほとぼりも冷めて平穏に触れると
今度は平穏を失うことを死ぬほど怖がる


人は移り気で、その度健気な生き物だ


路上でうらぶられても
最低を最低限で生き延びていても
猟奇的な夏の暑さに焼かれ
高い空の果てまでシリアスな冬に凍てついても
何もないなりの今を失うことを
やはり僕らは健気に「怖い」と思っていた



実験体を希望する者として手を挙げたのが自分だけだったことは
驚きではあったが意外ではなかった
夢も希望も枯れ果てた日々でも、汚れながら笑えてる今を
100か0かのダイスに賭けることは
人生のエンドロールに再び残酷を突きつけることになる


それはもうバカにとっても馬鹿げている




ただ、胸の奥にダイヤを残してしてしまってただけなんだと思う
かつての願いが少しずつ形作っていた結晶を


輝きも失い、時間と言い訳に何層にもくるまれたダイヤは
それでも世界と精神において最高の硬度を誇り
一片も欠けることなく
自分の最底に存在し続けた


それだけの理由にもならない事実が
今更、僕に命を賭けさせた
人生は全てが現実なのに
自分にとっては最期まで夢物語だなと
嘲笑をしながらタイムマシンに乗り込んだ




一瞬で光を超えるらしい
一瞬で僕はあの世か過去に辿り付くらしい
リスクとか冷静に語る以前の笑い話のようだ


名前も失い、老いた社会のモルモットを乗せた機体は静かに振動を始める
失敗前提の胸の内を隠す白々しさのように
全身白衣の科学者達が何らかの合図を送り合っている


首を擡げ、少し様子を覗おうとしたその刹那
全身を押しつぶされるような凄まじい衝撃に襲われた気がした
そう・・・ほんの一瞬過ぎて「気がした」だけだったのだ




容赦ないな
世の中も超常現象もどれも容赦なさ過ぎて
結局、いつだって笑い話にすら出来やしない




朝の覚醒によく似た目覚めだった
意識を取り戻した僕はそれこそベッドの中に居た
見慣れた・・・いや、見慣れていた部屋
九龍城のように積まれたCD、無造作に林立するギター
時代遅れのパソコンが二台


跳ね起きながら転げ落ちるようにベッドから降りた僕は
スリープ状態だったパソコンのマウスを取り憑かれたかのように叩き続けた
ゆっくり再起動する黒いディスプレイに写った顔を見て呆然とする
若返っている
そこ写っているのは確かに昔の
あの頃のままの自分だった


デスクトップの左下、カレンダーは2013年6月4日を示している
タイムスリップだ
約30年の時を遡り僕は嘘のように、今ここに居る


しかもマシンの不具合なのか、何かの副作用なのか
身体ではなく心だけが時間を飛び越え
昔の自分に宿っている




初夏の柏、30歳の僕
そうあの時期こそが
人生をやり直せる最後のタイミングだったんだ






↑ 有名なタイムスリップネタの名言よりモンモンと妄想した
こうやって思うだけで「今」に怖いくらい意味を求められる


漫然に紛れてしまう一日なんてありえない



曲書きます
こんなこと書いてる場合じゃない(笑)