一作

大崎善生, 将棋の子

将棋の子 (講談社文庫)

将棋の子 (講談社文庫)

将棋の世界ではプロの棋士を目指す奨励会において
26歳までに四段にならなければ
強制的にプロの棋士への道を閉ざされてしまうという厳しい年齢制限がある


物心付いた頃から人生と青春の全てを捧げて来た
将棋の夢から挫折した奨励会員達のその後を描いたノンフィクション



自分は人に本や映画、音楽などの作品を紹介してもらうとき
「その作品を観賞した後、自分の人生が変わるほどのもの」と注文を付けているのだけど
この作品は初めて本当の意味で自分の人生を変えた一作になった



まず作品として本としてどうこう以上に
この現実が衝撃的過ぎるというか
何の甘えも逃げ道も言い訳もなく・・・正面から夢に破れるということが
どういうことなのか思い知らされた


その後の人生を、燃え尽きて風に飛ばされるように転げ落ちていく人も居れば
初めての社会の厳しさに太刀打ちできずに絶望する人も・・・
一つのことに全てを懸けて打ち込める天性を活かして違う道を切り開いていく人も居る

夢を追う人や、夢を経た人の強さや魅力は
どれも紙一重で残酷が故なんだよなと


「頑張ったことに意味がある」は改めて完全なるキレイゴトだと思った
ただ、そのキレイゴトだけを支えにして守って生きていく人もいる



自分にしっかりと今の「挫折」を受け止めさせてくれた一作


薦めてくれた某盟友には心から感謝しています