一作

重松清, 定年ゴジラ

定年ゴジラ (講談社文庫)

定年ゴジラ (講談社文庫)

定年を迎えた父親達が
住みなれ、同じく年老いニュータウン
自分の居場所や生きがいに悩みながらも
仲間や家族との繋がりや絆を
優しく温かく生きていく一作


個人的には重松先生の書く
ドラマチックさや泣かせ所みたいな部分が
あまり好みじゃなかったりする
淡々とした日常の中で起こる出来事を描いたこの作品は
逆にそれが強調されなかったから良かったのかもしれない


「幸せとは苦笑いとともに零れてくるものだ」
のような一言が作中にあったと思うけど
平面な感動や喜びじゃなく
ふと気付ける感情の描き方や
じんわり感じてくるそれがとても良かった



現在の自分もそうだが
歳を重ねるごとに自分を育ててくれた家族や
これから築いていく家庭を意識したり
考えていくようになるものなんだなとしみじみ実感した


昔対バンした人がMCで「やりたいことをやればいい、好きなように生きればいい」
のようなことを語っていたけど
おれは、自分に関わる人の存在や悩みや命のことを想像すると
間違っても自分の都合だけの発言って出来ないよなと思ってしまう


選ぶ選ばない以前に
大抵の人間は本当の意味で一人ではない
それを良くも悪くも受け止めていくことが
歳をとっていくことなんだと感じるから