僕と絶対

江利子と絶対〈本谷有希子文学大全集〉 (講談社文庫)

江利子と絶対〈本谷有希子文学大全集〉 (講談社文庫)

骨が反り返ってる・・・根が腐ってるというか
「○○してはいけません」と言われると
あえてそれをしたくなる


髪を染めてはいけませんって言われるとあえて染めるし
シャツの第一ボタンを留めましょうって言われたが最後
おれはおれの開放と
セクシーな胸元を誇るしかないなと思ってしまう



でも、そこに「絶対」という言葉が入ると急に怖くなる


言葉フェチ、言語信者にとって「絶対」という言葉の力
絶対力はもはや平伏すしかないほどの恐怖に値する
それこそ逆らったら殺されるとしか思えないほどの


この単語考えたやつマジ皇帝だろ・・・



最近、怖くて仕方がないのがカップラーメンに入ってる後入れスープ
「絶対に麺をほぐした後にお入れください」ってやつ


もうね、おれはただ黙って3分待ち、全力で麺をかき混ぜ
そして間違いのない後入れを果たし
守りましたよ!殺されませんよね?
ご指南ありがとうございますと平伏しながら
美味しさに納得しながら麺をすするわけなんですよ



この世では絶対が美味しさを決め、約束を果たし
僕らの心に安心をもたらし・・・
でも、争いがなくならないのはそれぞれに違う絶対が存在し
それに心酔し、恐怖する心が
それぞれまとも過ぎるからなんだと信じてる




・・・まあ、そんなこんなでいつものように
後入れスープをフタの上に乗せながらコンビニでラーメンにお湯を入れてると
隣で予備校生らしき2人が


「おれめんどくせえから具とかスープとか最初に全部入れちゃうんだよねガハハ」


「え?それって普通じゃね?どうでもいいよね作り方とかぁ」


とか言い出してるわけですよ
おれはびっくりして瞳孔すら開いたね
これはもうとんでもないユダなわけで


もはや祈ったよ、彼らの無事だけを



絶対を守れないあなた達の進む先には
美味しいラーメンも、聖戦も存在しないけれど


せめてほぐれなかった麺をモソモソ食べながら
文句も言えないまま社会に従順し続ける
信仰なき人生が待ってますようにと