一作

ジョイ石井, オトコタチノ狂

オトコタチノ狂 [DVD]

オトコタチノ狂 [DVD]

孤独に暮らす青年、櫻井の元に幕末の世から
久坂玄瑞土方歳三中岡慎太郎中村半次郎らがタイムスリップしてくる


世の中のギャップや精神の在り方の違いに戸惑いながらも
それぞれ心を通わせていくが
近所で起きた殺傷事件への志士たちの関わりを巡り
警察の捜査の手が迫る・・・



この手の作品って、時を超えてきた志士たちが
派手な抜刀術で姑息で軟弱な現代人を斬りまくったり
イケメンっぷりで腐女子をキュン死させまくるパターンが実に多いのだけど
面白いことに、この作品に関してはほとんど全ての時間が
一つの部屋の中の五人の淡々とした会話だけに費やされてる


インディーズ映画の予算の関係と言ってしまえばそれまでだけど
逆に言葉だけで人の心、精神の移り行きを撮り切り作品にしたというのは
もう気力の段階から凄まじい



昔の武士や軍人の崇高な魂に感動して現代人が目覚めるという部分は
それこそ、この手のタイムスリップ物にありがちではあるけど
逆に、ただ一人の人間として生き、人を心配し、必死に悩む現代人の姿を見て
敵対し合っていた志士達が自分たちを見つめ直し
人としての情で櫻井を守ろうと一つになっていく描写は
この作品ならではなんじゃないかな
誰もが最後には人間らしい



自分の理想とする「タイムスリップ物=バッドエンド論」に正しく合致するくらい
超常現象の全てを消しまくる全力バッドエンドだけど
それでもあらゆる方向から射した志の光と、遺った命懸けの影は
全てを薄めていく現代の中で消えることはない