夢の中のまっすぐな道

塾講と掛け持ちしながらうちのパン屋で働いてる子がいるんだが
その子の塾での教え子が、よく朝にパンを買いに来る


教え子の彼が先生な彼女にパンを包んでもらいながら
「へへへっ・・・」ってなってるのを見ておれの直感は感じ取った
ああ、こいつ完全に先生に恋してるわ・・・と



恋の夢中が幸せなうちは良い
だけど、年上の女性への恋はつらいことが本当に多い
無力さを思い知ることばかりだと思う
立場が違うと特に
様々な場面で答えられないこと応えられないことだらけで
一人の男としてまともに戦うことすらままならない



自分は、そんな4歳年上女性への2年間の恋慕で
一生消えない染みを心にいっぱい作り
存在が干からびてしまうほど無力を思い知った
結果的に、一つの恋にアイデンティティの80%くらいを書き換えられた


自分が決定的な自我を持ったのもあの時だったからな
関東へ飛び出してくる阿呆へ覚醒したのも
恋が単なるラブで刹那な感情から、人生に広がり続ける痣に変わったのも
全て全部あの人を好きになってからだった



対等になれない恋って自分が自身から感じ続ける部分がほとんど全てだから
勝負みたいに負けてさっぱり終われる人はいいけど
想いと付き合い続けようと思ったら
よっぽどの覚悟と息の長い意志がないとかなり厳しいぞ・・・教え子君!!




「彼もね、いつか振り返ると思うんだわ、あの時の無力さがおれを変えたんだって
・・・でも変わったおれも想いに貫かれたままじゃねえかハハッて」


「・・・タカハシさん、さっきから何言ってるんですか」


「何でもない。男はね、きっと無力を知って初めて自分を見つけるんだよ」




ナリタさんありがとう
あなたがいなかったら今のおれは0.1ミリ足りとも存在しなかった