誰も触れない二人だけの国

「この服、M(娘)が買ってきてくれたんだけど・・・似合う?」
という祖母に
「おお、良く似合う。
もうちょっと若い頃だったら連れて歩きたいくらいだ」
と、寝たきりで答える祖父にみんなで笑った後
どうにも涙が堪えられんくて
おれは席を外した


付きっ切りで看病する妻に対して
この言葉を悲しみでも後悔でもなく
いつもの調子と気持ちで伝えられる彼は
本当にすてきな夫だと思った



老いは誰からも等しく自由と可能性を奪ってく
日常はジリジリといろんな場面で心を試してくる
だけど愛という道理は
それを越えてどこまでも尊い


祖父はいつもそういうことを教えてくれた